Thaibeatの現在地
(2026.6/4 本文追記しました)
またかなり久々にブログ動かしてみました。
東京を拠点に、インドネシアのダンスミュージックであるFunkotでDJをしている政(まさ)と申します。
今回は「Thaibeat」というワードに焦点を当てた記事になります。
このへんについては正直なところ専門外の話になるので、備忘録に近い内容になります。
不正確な情報・欠落した情報が多分に含まれていると思いますので、もし有識者の方がいらっしゃいましたら是非コメントいただければと思います。
在りし日の「Thaibeat」
今回テーマとしている「Thaibeat」というワードですが、筆者の観測上では2010年代半ばごろから、インターネット上で見かけるようになった印象があります。
当時の「Thaibeat」は、マレーシア人によるマレーシアテクノ(Fengtau)の近縁種のような感じのジャンルを指す名称でした。
ちなみに、Fengtauはこんな感じです。
類似している要素も多いですが、ベースラインのシンセ、スネアのサンプルやハイハットの刻み方などが異なっているのがわかるかと思います。
(Fengtauのほうがよりハンズアップに近い感じで、Thaibeatのほうはややいなたさがありますね)
Fengtauについては、上記の参照動画のタイトル・投稿日からもわかる通り、現在も製作されつづけているようですが、「Thaibeat」については全く姿を見なくなってしまいました。
→この点についてはどうもそうでもなさそうなので、詳細後述します!(2026.6/4追記)
しかし、最近気になって少し調べてみたところ、「Thaibeat」の名称自体はどうやら全く別の姿で生きているらしいことがわかってきました。
現在の「Thaibeat」
現在「Thaibeat」で調べると、このような曲風の楽曲がヒットします。
東南アジアのダンスミュージックに詳しい方はピンと来たかもしれませんが、このビートは明らかにタイのローカルダンスミュージック、「サイヨー」をベースにしています。
サイヨーについてはアトロクの特集回で詳しく解説されていますので、気になる方はチェックしてみてください。
ということで、超大雑把な言い方をすれば「『Thaibeat』はタイの『サイヨー』を指す別名である」ということもできると思うのですが、筆者が観測する限りでは下記のような微妙な違いがあるようです。
- サイヨー
- 「สายย่อ」、「TIKTOK เพลงฮิต」等で検索するとヒットする(「Saiyor」だと意外とあまり出てこない)
- タイ産
- 主にタイ語ヒット曲が中心、洋楽ヒット曲もあり(=タイ人にウケるネタが中心)
- Thaibeat
- 「Thaibeat」と検索するとヒットする
- タイ以外で生産
- タイ語曲はほぼ出てこず、洋楽ヒットや往年のアンセムネタなど(=タイ人ウケを狙っていない?)
以上の観点から、便宜上引き続き「Thaibeat」という名称に焦点を当てて書いていきたいと思います。
東南アジア諸国での受容
前項までは、「Thaibeat」という名称が指す音楽自体の特徴について焦点を当ててきました。
ここからは、フライヤーやDJ等の周辺情報から、タイ以外の周辺諸国(マレーシア・インドネシア)での「Thaibeat」の立ち位置を推察してみたいと思います。
こちらはマレーシア(クアラルンプール)のクラブのフライヤーです。
Dugem*1と並んで「Thaibeat」を前面に押し出した告知となっていることから、少なくとも「Thaibeat」はそれなりに集客を見込めるジャンルという認識があるようです。
ちなみに、ちょっと話が前後しますが、前項の最初に紹介した動画もマレーシア人DJによるmixです。
こうしたところから、「かつてのThaibeat」と変わらずマレーシアで流通している名称であることがうかがえます。
@jovero_ THAI BEATNYA BANG 💥 #dj #holywings #top5 #mimilivehouse #thaibeat ♬ original sound - DJ Jovero
こちらはインドネシアのDJ JOVEROによるThaibeatのショート動画。
DJ JOVEROは現在インドネシアで急拡大中のクラブ・エンタテインメントカンパニー、「Holywings」所属のDJとのこと。
彼のTikTokでは他にも、インドネシアで大人気のジャンルであるBreakbeatやDutch、華僑・華人コミュニティに厚く支持されているマンヤオ等、様々なアジアンダンスミュージックを題材としたショート動画が製作されていますが、割合的にはそれらと変わらないくらいの本数で「Thaibeat」の動画が製作されています。
ここから、インドネシアにおいては上記のような比較的堅い支持層のあるジャンルと同列のプレゼンスをもったジャンルとして捉えられていることがうかがえます。
個人的な考察と、気になっている点
前項までは、筆者が観測してきた「Thaibeat」に関する様々な情報についてまとめてみました。
ここからは、個人的な考察や推測、所感、ならびに気になっている点(今後調べていきたいこと)について、つらつらと書いてみたいと思います。
・「サイヨー」と「Thaibeat」の関係
これまで、サイヨーはタイ独自のローカルダンスミュージックであるという認識が一般的でした。
しかし、マレーシアやインドネシア等の周辺国でサイヨーをベースにしたビートが「Thaibeat」として流通しているということは、人的交流もしくはインターネット上での交流によってサイヨーが輸出されていることになります。
マレーシア・インドネシアなどの、語圏を同じくする国の間で同じジャンルの曲が流通するのはよくあることですが、全く異なる語圏の国の間で流通するジャンルというのは珍しい*2気がします。
・"LAOS STYLE"とは何なの?
「Thaibeat」関連のmixを漁っていると必ずと言っていいほどヒットするのが、「LAOS STYLE」という文言。
ラオスといえばたしかにタイの隣国ではありますが、一体これらのmixのどの辺にラオス要素があるのかが不明です。(そもそもラオス要素って何?)
"LAOS STYLE"の付いているmix/付いていないmixで聴き比べてもわからず、ラオス語のネタが入っているかどうかも関係無いようなので、今のところ意味は全くわかっておりません。
・もう「かつてのThaibeat」は消えてしまったのか?(消えてなかった!)
一番最初の項で紹介したFengtauの近縁種としての「Thaibeat」に関して、現在では当時の曲風の楽曲を新たに耳にすることは無くなってしまったことについては、既に触れました。
アジアンダンスミュージックの世界は非常に商業的であるため、DJやリミキサー達は常にその時々で人気のあるジャンルにどんどん転向していく、ということは往々にしてあることです。(逆に、人気のあるジャンルは半ば工業製品のようにもの凄いペースでリミックスが量産されます)
かつての「Thaibeat」も、もともとそこまで量産されていたジャンルでも無いので、人気の凋落に伴い自然消滅してしまったのかもしれませんが、個人的にはやはりあの4つ打ちの高速ビートと特徴的なリズムサンプルが忘れられません。
→やっぱり2026年現在でも「かつてのThaibeat」のmixは作られていました。再生数等を見てもそれなりにまだまだ需要はあるみたいです。(2026.6/4追記)
おわりに
あまりにも中途半端な内容になってしまいましたが、とりあえず思ったことを書き留めてみました。
本稿でもたびたび登場したマレーシア・インドネシアの状況としては、Funkotがメインストリームの座から外れて久しく、現在主流となっているBPM150~160帯のジャンル(Breakbeat/Dutch)については質・量ともに既にピークの状態にあります。
もしかすると、これらに次ぐ新興のジャンルとして「Thaibeat」が盛り上がる日も来るのかもしれませんね。
引き続き、ウォッチしていきたいと思います。
繰り返しにはなりますが、この辺の事情に詳しい方がいましたら是非補足・修正情報いただけると助かります。
では、今回はこの辺で…。
Funkotにおけるスペイン文化圏からの影響の可能性について
かな~り久々にブログ動かしてみました。
細々とFunkot集めたり聴いたりしております政(まさ)と申します。
プロフィールのところにもありますが、実はSoundcloudにもmixアップしたり過去のオーダートラックまとめてたりしますので、よければ聴いてみてください。
今回はちょっと突っ込んだ話題ですが、普段なんとなく考えていたりX(旧Twitter)でちょこちょこ呟いたりしていた、Funkotの元ネタ関連の話を書き起こしてみたいと思います(思考の整理も兼ねて)。
はじめに
この記事にたどり着いている皆さんであれば既にご存じのとおりと思いますが、Funkotはその誕生から現在まで様々なジャンルのサンプリング・引用を重ねて成り立っています。
↑Dugem Rising™のSuamaさんによる元ネタ解説ブログ
↑紀伊さんによる元ネタ解説ブログ
特に引用されがちなフレーズやサンプルをおおざっぱにくくると、「クラシックトランス」「洋楽(2000年前後のポップス、あるいは80年代とかの懐メロ)」「EDM」「中国語歌謡(=華僑にウケるネタ)」「その他インドネシアで流行った曲のフレーズ(=インドネシア人の客にウケるネタ)」といった感じになります。
Funkotはその性質上、客にウケることを至上とした商業音楽(工業製品)なので、自然と上記のようなメジャー分野からの引用が主となります。
ただし、一部は元ネタが判明していなかったり、「なんでこんなところから?」と思うようなマイナー分野からの引用もあったりします。今回はこちら側、より具体的に言えば「スペイン文化圏」との関わりに焦点を当てて掘り下げてみたいと思います。
L'Estaca
最初に紹介するフレーズは「L'Estaca」という曲のフレーズです。
Funkotでの登場頻度はそこまで多くはありませんが、一昔前のトラックでちょこちょこ引用されていた印象です。
↑出所不明のFunkot mix音源(CyberDJ™の音源らしい…)。タイトルそのまんま「Lestaca」というトラックが収録されてます。サウンド的には2010年よりも前っぽい?
↑伝説のFunkotコンピシリーズ盤「Funky Teknique」から。Ronny御大の「Ayla 2012」の間奏でL'Estacaのメロディーが使われています。
この「L'Estaca」は、スペイン生まれの歌手リュイス・リャックによる1968年の曲が元ネタとなっています。
実は、L'Estacaのフレーズが流通する範囲というのは非常に限られています。というのも、この曲の成り立ちには極めて政治的・民族的なアイデンティティに関わる背景が存在するからです。
さて、まず、リュス・リャックの「レスタカ」。この曲は1939年のスペイン内乱以降、フランコが行ったカタルーニャ語、カタルーニャ文化に対する弾圧的な政策に対抗して「カタルーニャ語による新しいポピュラー音楽」を推進する音楽運動「ノヴァ・カンソー(新しい歌)」のシンボル的な歌。
引用元:本田健治「音楽が世の中を大きく変えた時代〜1974年、スペインの記憶カタルーニャの『ノヴァ・カンソー』その1」『e-magazine LATINA』2021年2月24日
https://e-magazine.latina.co.jp/n/ne055e25f08a1(アクセス日時:2024年3月2日)
上記のような背景から、「カタルーニャのアイデンティティ感情を高揚させる歌」として、また「政治的な自由を求める闘争歌」として、カタルーニャ地方を中心としたヨーロッパの一部の民衆の間で歌い継がれてきました。
それがなぜ、遠く離れたインドネシアのダンスミュージックの中に引用されるのでしょうか?
この問いに対する推測として、筆者はスペイン産のダンスミュージックである「マキナ」がヒントを握っていると考えています。
ここでいったん「L'Estaca」の話題を脇に置き、今度はオリジナルがマキナの楽曲について掘り下げてみたいと思います。
Here We Go
続いてのフレーズは、発表当時日本のFunkotリスナー達に衝撃を与えた不朽の名ミックステープ「KMI™ Mixtape Vol 1」から、DJ Andy - Here We Go 955のフレーズを紹介します。
↑曲自体は18:30くらいから、該当のフレーズは20:48から登場します。
展開・サウンドの斬新さ、完成度の高さゆえか、これまでこのmixで使われている楽曲の元ネタについて言及されることはほぼありませんでしたが(あくまで筆者の観測範囲内)、実はこのトラックの元ネタはマキナである可能性が非常に高いです。
↑メインのフレーズ(1:24~)が一致しているだけでなく、2:24~あたりからのリフまできちんとfunkotで再現されてます
ここまで来てかなり回りくどくなってしまっていますが、ではそもそもなぜファンコットにマキナが引用されているのか?という疑問が出てきます。
ここから先は、この問いに対する自説とその他考察を記載してみます(あくまで筆者の偏見と憶測によるものです)。
真相はリミキサー本人のみぞ知るというか、直接聞くしか正解に辿り着く方法は存在しないのですが、あくまで考古学的ロマン程度にお読みください。
マキナとファンコット
話が前後してしまいますが、上記の通りもしマキナを引用しているファンコットが存在するとすれば、最初に紹介した「L'Estaca」がファンコットに引用されているのも辻褄が合います。
というのも、「L'Estaca」のフレーズはそのままマキナのクラシックアンセムとなっているからです。
スペインのダンスミュージックなので、同じ文化圏の「L'Estaca」のフレーズが引用されるのはある意味当然なのですが、では一体そのことがなぜ国外にこのフレーズが流出することと繋がるのでしょうか。
ここまで来るとマキナ有識者の方はピンと来るかもしれませんが、マキナにはスペイン以外の地域でもう一つ、大きなシーンを持つ国があります。
90~00年代にかけて、マキナはイギリス北東部を中心に主に労働者階級の間で広がり、支持されるようになりました。
ちなみに、マキナはその源流を辿ると初期のトランス・ユーロダンス周辺に行きつきますが、源流を同じくする音楽でその頃北西部で支持されていたのが、スカウスハウスでした。実は、ファンコットは初期の段階から明確にスカウスハウスの影響を受けています(筆者過去記事も参照ください)。
筆者が専門家でないため、イギリスの北東部と北西部、マキナとスカウスハウスでどれだけの近接性というか相互作用があったかはわかりませんが、「イギリスのダンスミュージックでトランス・ユーロダンスから発展した音楽」というくくりでインドネシアから見たときに、どちらにアクセスする可能性も考えられます。
上記のような理由から、ファンコットがマキナから影響を受けていると考えてもおかしくはないのかな、と思っています。
排除しきれていない可能性
長々と書いてしまいましたが、今までの推測はあくまで偏見と憶測に基づくものですので、最後にもう一度今回の記事で扱いきれなかった部分を記載しておきます。
- オリジナルがマキナではなく別に大元となる曲が存在して、そちらから引用している可能性
- →マキナ有識者の方もし読んでいらっしゃったら、ぜひコメントください。ミックス形式の資料については、紹介していない楽曲も元ネタわかればぜひご教示いただけますと幸いです。
- リミキサーがイギリス経由とかでなく、はじめからスペインのマキナの存在を知っていた可能性
- →もし古参リミキサーとこの辺の会話されている方いらっしゃいましたらご教示いただけますと幸いです。
おわりに
だいぶいろいろなジャンルを横断した記事になってしまいましたが、あらためてFunkotの懐の広さ・奥の深さを感じました。
近年はインターネットの発達によって、Funkotも様々なジャンルの音楽との融合を遂げていますが、逆にルーツの方へ向かってみてもまだまだ未知の領域が多いということがわかりました。
この記事を読んだFunkot・マキナ関係者の方々がお互いにちょっとでも興味を持ってもらえればうれしいなと思います(誰目線?)
では今回はこの辺で。
個人的おすすめ現地産funkot mixtape5選
東京を拠点にFunkotでDJをしている政(まさ)と申します。ちょうど一年前に「Funkotのフリートラックの紹介(2020)」という記事を書きましたので、funkotの入手に興味のある方は是非ご一読ください。
また、Funkot関連の情報(Funkotの入手方法など含む)はティッケー情報さんのサイトにまとめられておりますので、併せてご覧ください。(ページはこちら→ティッケー情報!!)
今回は個人的に気に入っている現地産(インドネシア人による)funkotのミックステープを紹介したいと思います。
- はじめに
- マンダリン(中国語歌謡のFunkot)のミックス(2015)
- Hardfunk(ハードなインストモノFunkot)のミックス(2015)
- インドネシアのFunkotマニア、Akbarによるミックス(2020)
- 現地トップリミキサーが実際に現地のクラブでプレイしたセットの録音(2019)
- FunkotがFunkotと呼ばれるようになる前のミックス(年不明)
- おわりに
はじめに
Funkotの大きな特徴の一つに、BPMとイントロ・アウトロの展開が固定されている、というところがあります。これはひとえにミックスのしやすさを追求した結果であり、翻ればFunkotはミックスされてなんぼの音楽であると言えます。
そこで、今回はFunkotのミックスに焦点を当てて、聴き始めた方から少し詳しい方まで楽しめるようなミックスを選んでみました。
マンダリン(中国語歌謡のFunkot)のミックス(2015)
一つ目は、インドネシアのトップリミキサー、Willyによるマンダリン(中国語歌謡のFunkot)のミックスです。
サウンド、展開ともにまさにFunkotのミックスの教科書のような安定感があります。
注目ポイントは、4曲目に宇多田ヒカルのFirst Loveが入っているところ(ちなみにこの曲はDJ RonnyのBandcampで購入することができます)。マンダリンのMixといいつつ日本の楽曲も使われているあたりが、国境やジャンルを全く気にせずなんでも呑みこむFunkotというスタイルらしくてよいですね(しれっと3曲目も韓国語の曲だし…)。
個人的なお気に入りポイントは最後のトラック、张杰 - 他不懂のリミックスのエンディング感です。パーティーの終わりでかかったら泣いてしまうかもしれません。
Hardfunk(ハードなインストモノFunkot)のミックス(2015)
二つ目は、KMI™(現955™)による、Hardfunkと呼ばれるハードなインストモノのFunkot mixです。
ほぼインストオンリーの疾走感あふれるミックスながらも、4つ打ちやハードスタイルのダウンビートを適所に挟むことで、飽きの来ない展開になっています。
個人的なお気に入りポイントは10曲目のLeathal Sea 955(この曲もDJ RonnyのBandcampで購入することができます)。mixのクライマックスに、往年の歌モノトランスの大アンセムであるDelerium - Silenceネタをもってくるのが絶妙です。
インドネシアのFunkotマニア、Akbarによるミックス(2020)
三つ目は、インドネシアのFunkotマニアともいうべきAkbarのオーダートラックを中心に構成されている(と思われる)Funkot Mixです。
少し上級者向けの話にはなりますが、AkbarはLBDJSのWillyをはじめ有名なリミキサーに2018年ごろから多数トラックをオーダーしています。その多くはFunkoterにはおなじみの定番ネタであるため、かなりFunkotに詳しい人物であると思われます。このミックスでは、そうしたFunkotの定番ネタの数々を比較的最近のサウンドで堪能することができます。
注目ポイントは1:25:26~のWilly - I Need A Doctorです。この曲は最近の流行りであるFunkot Revolutiont的な展開がなされています(Funkot RevolutionについてはYuma氏のこちら の記事で詳しく紹介されています)。
個人的なお気に入りポイントは43:41~のAndy - Childrenです。原曲のepicさを残しながらも、Hardfunkでお馴染みのBailarを効かせたメリハリのある展開が気に入っています。
現地トップリミキサーが実際に現地のクラブでプレイしたセットの録音(2019)
四つ目は、インドネシアのトップリミキサーであるNoX2がKantor Discotheque(おそらくスラバヤにあるクラブ?)にてプレイした際のFunkot Mixです。
タイトルに"Aug17"とありますが、8月17日はインドネシアの独立記念日であり、この日は国内全体が祝賀ムードに包まれ、多くのイベントが開催されます。この日の録音を公開したのは、クラブイベントもやはりそれだけ盛り上がるため、渾身のプレイを披露することができたからかと思われます。
注目ポイントは、ダウンビート楽曲同士をダウンビート部分でつなぐ展開が多用されているところです。2時間近くあるロングミックスながらも聴きやすいミックスになっています。ところどころ入るMCも現場の雰囲気を感じられてよいです。
個人的なお気に入りポイントは1曲目のAndy - The Evil。しょっぱなからダークな雰囲気の4つ打ちで始まるのでインパクトがあります。
FunkotがFunkotと呼ばれるようになる前のミックス(年不明)
最後に紹介するのは、おそらく2000年ごろの楽曲で構成されていると思われる、詳細不明のミックスです(幸いなことにdescriptionにトラックリストだけは載っています)。現在ではほとんど聞かなくなってしまったネタもありますが、大半はFunkotの超定番ネタとして認知されている曲ばかりです。
Funkotについて少しかじったことのある方ならば、Funkotがハウスミュージックから派生したものであるということはご存じかと思います。ただ、そうは言われてもにわかには信じがたいのが本音かと思われます。
しかし、このミックスはいわゆるファンキービート("ドッタドッドタ"というリズム)と4つ打ちのビートが半々くらいで使われており、Funkotがハウスミュージック由来であるということを実感できるミックスになっています。
注目ポイントは14曲目のpoem without wordsです。もちろんFunkotの定番ネタということもありますが、裏拍で鳴っている鈍いシンバル(キンッキンッという金属音っぽい音)のようなサンプル音は、現在ではFunkot以外ではイギリス発祥のScouse Houseでしか聴くことができません。こうした部分からも、Funkotとハウスの深いつながりを感じることができます。
おわりに
はじめにも書きましたが、Funkotはミックスされてなんぼの音楽といえます。Funkotに興味のある方は、ぜひティッケー情報さんなどを覗いていただき、音源を集めてフリーのDJソフトや安いコントローラーなどでミックスしてみることをおすすめします。好きな曲を繋いでノリノリになるのは楽しいですよ。
ミックスの方法はDugem Rising TeamのSUAMA氏のブログをはじめ、様々な方が発信されています。今回の記事で紹介したmixなどを参考に、ぜひとも自分なりのFunkot mixを作ったり、見つけてみたりしてはいかがでしょうか。
Funkotのフリートラックの紹介(2020)
東京を拠点にFunkotでDJをしている政(まさ)と申します。ちょうど一年前に「Funkotのフリートラックの紹介(2019)」という記事を書きましたので、未読の方は是非ご一読ください。
また、Funkot関連の情報(Funkotの入手方法など含む)はティッケー情報さんのサイトにまとめられておりますので、併せてご覧ください。(ページはこちら→ティッケー情報!!)
(2021.11.4追記) 記事下部にティッケー情報さんによるFunkot販売サイトまとめのリンクを追加しました。
今回は2020年5月23日現在ダウンロード可能な現地リミキサーのフリートラックを自分がわかる範囲で紹介していきたいと思います。
Willy L3 - Perfect 111 Hardmix (Willy L3 Remix)
現地のトップリミキサーであるWilly L3による、Ed Sheeranの「Perfect」のリミックスです。Willyは最近のFunkotシーンで流行している「Funkot Revolution*1」というムーブメントの火付け役でもあります。このトラックではFunkot Revolutionに見られるような前衛的要素は無いものの、非常に安定感がありハイクオリティな仕上がりとなっています。動画の詳細にダウンロードリンクが書かれています。
Willy L3 - Goodlife
こちらもWilly L3のトラックです。「Perfect」のリミックスもですが、長調ということもあり多幸感溢れる仕上がりになっています。個人的な所感ですが、Funkotのネタとなる楽曲は哀愁(インドネシアでは"Galau"と言うそうです)漂うバラードのような曲が多いため、長調のトラックはあまり多くないように思います。
N.S.PUTRA L3 - Kemarin
インドネシアのポップスバンドSeventeenの代表曲「Kemarin」のN.S.PUTRA L3によるリミックスです。非常に人気のあったバンドですが、2018年末にスンダ海峡津波の被害に遭い、ボーカル以外のメンバーが亡くなりました。追悼の意を込め、現地では津波の直後からたくさんのアーティストがこの曲をカバーしました。Funkotシーンにおいても、たくさんのリミキサーがこの曲をリミックスしています。
N.S.PUTRA L3 - Miraie vs Sayang
こちらもN.S.PUTRAによるトラックです。Kiroroの「未来へ」は日本でも非常に有名な楽曲ですが、インドネシアのアーティストVia Vallenが「Sayang」としてカバーしたこともあって、インドネシアでも非常に人気があります。PUTRAのこのリミックスは、その二つを合体させたものとなっています。余談ですが、Kiroroの「未来へ」は台湾のアーティスト劉若英も「後來」というタイトルでカバーしており、マンダリン(中国語歌謡のFunkot)としてリミックスされることもあります。
Joehan Zhang - Takkan Pisah Hardmix
Apin17 - Merry Christmas & Happy New Year 2020
最後は、2018年末の来日公演も記憶に新しいApin17のトラックです。クリスマスソングである「We Wish You a Merry Christmas」と、ニューイヤーソングである「Auld Lang Syne」を合体させた、ダウンビート(途中でテンポが遅くなる)トラックとなっています。この「Auld Lang Syne」は、日本では「蛍の光」というタイトルで主にデパートなどの閉店アナウンスや卒業式の歌として親しまれていますが、海外では主に新年の到来を祝う歌として親しまれています。
執筆時点でダウンロード可能であることを確認できたトラックを紹介しました。ただ、今後DL数制限や期限切れ等でアクセスできなくなる可能性もあるので、お早めにダウンロードされることをおすすめします。
また、最近ではL3™をはじめとする現地のDJ/リミキサーたちが、Funkotのトラックやアルバムを直接販売するようになってきています。こうしたFunkotの販売には注文の期限が設けられている場合が多いため、興味のある方は冒頭でも紹介した「ティッケー情報!!」さんや、日本人Funkot DJのSNSアカウントなどをこまめにチェックされると良いかもしれません。
(2021.11.4追記) ティッケー情報さんが現地DJの音源が購入可能なFunkot販売サイトをまとめてくださいました。詳しくはこちら。
では今回はこの辺で。また気分が向いたら何か書こうと思います。
*1:詳しくはyuma氏によるこちらの記事をご参照ください:https://note.com/kuchakuchaanime/n/nf7e81d61bf26
Funkotのフリートラックの紹介(2019)
2年前にDugemRising™所属のFunkot DJ、Aki氏が執筆されたこちらのブログに触発されて書くことにしました(未読の方は是非ご一読下さい)。
akifunkotszakifunkotsz.hatenablog.com
ちなみに、ティッケー情報さんのサイトでも多数フリートラックが紹介されていますので、そちらも是非併せてご覧ください。
今回は2019年6月8日現在ダウンロード可能な現地リミキサーのフリートラックを自分がわかる範囲で紹介していきたいと思います。
Hijau Daun - Ilusi Tak Bertepi 111 (Fatah L3 Remix)
現地のリミキサー,Fatah_L3によるインドネシアのポップスグループHijau Daunの楽曲のリミックスです。最近のFunkotで使われることが多いBig Room Kick(Floatingと呼ばれる*1)(1:52~)が印象的です。
Ilir 7 - Salah Apa Aku ( Delon L3 Remix )
こちらもインドネシアのポップスのリミックスです。最近のFunkotは凝った展開で長いトラックが多いのですが,こういうシンプルなものも聴きやすくていいかなと個人的には思います。
Aku Cinta Kau Dan Dia Remix - DJ ALvarado 955™ Ft. Agung Christ
インドネシアのトップリミキサー集団であるSound of 955のオーナー,Alvarado氏によるこれまた現地ポップスのリミックスです。6:05あたりからの間奏でジャージークラブなどによく使われているBed Squeakというサンプルの音(キコキコという感じの音)が使われているのが面白いと思います。本人から許可をいただいたので、フルバージョンのリンクを貼っておきます。
Da Zhuang - Wo Men Bu Yi Yang (LVS Remix)
マンダリンと呼ばれるタイプの中国語歌謡リミックスです(原曲:大壯- 我們不一樣)。2017年にリリースされたこの曲は中国語圏で一躍人気曲となりました。descriptionのところにあるリンクからダウンロードできます。
Rino_L3 - Pu Ku Yi Chie Ai Ni 2018
こちらもマンダリン楽曲です。この曲は以前から様々なリミキサーによってリミックスされている、いわゆる定番曲のような感じの曲です。Floatingが使われているところが現代風です。
KSHMR - Strange Lands (N.S.PUTRA Remix)
こちらは現地でよくFunkotにリミックスされるEDMアーティスト,KSHMRのStrange Landsのリミックスです。いわゆるダウンビートというタイプのトラックで,原曲のサイケデリックな感じが存分に活かされているトラックです。descriptionのリンクからフルバージョンがダウンロードできます。
執筆時点でダウンロード可能であることを確認できたトラックを紹介しました。ただ、今後DL数制限や期限切れ等でアクセスできなくなる可能性もあるかもしれません。
また気分が向いたら何か書こうと思います。